たまたまaudibleで聴いて興味深かった本
「 きみが校長をやればいい 1年で国公立大合格者を0から20名にした定員割れ私立女子商業高校の挑戦」柴山 翔太 著
地方の女子商業高校から小論文入試で国公立大を狙う話。
国公立といえば大量の科目を並行して万遍なく習得するのが王道というイメージが一般的のような気がするのだが、考えてみれば文系学部なら小論文を磨いて突破でも入学後はさほど困らないと思った。
というのも、文系の学問は、教授の言っている内容や書籍・論文の論理の部分を理解して、それを踏まえて自分の論理を展開するのが肝だからである。
暗記マシーンに徹して合格することもあるのだろうが、そういう場合は入学後に苦労する。
レポート課題も定期試験も卒論も全て文章で書かなければならない。
しかも往々にして一つの事柄について複数の解釈があり得るような、絶対的に正しい答えなどなかったりする。
どんな結論に行き着いたかよりも、自分がどういう論理展開をしたかのプロセスを他人にいかに文章で示せるかの方が重要なのである。
古典や世界史、日本史等の知識がいくらか不足していても、論理的な思考ができるのなら入学後に自分で補足の勉強をすればよい。
小論文にはコツがある。構成と流れを意識すること。
構成は「起承転結」。
起→与えられたテーマの要約
承→テーマについて肯定的なことを書く(確かに〜で書き出す、理解力をアピール)
転→肯定的に捉えられなかった部分について自分なりの考えを書く(しかし〜で書き出す、思考力をアピール)
結→まとめ
分量の目安は1:2:3:1くらいで。
流れは、各パート内で、各文が自然に流れていくことを意識。
水が上から下へ流れるように、誰の目から見ても明らかであるように順を追って丁寧に記すこと。
勝負は「転」の部分でかける。というより「転」がほぼ全てである。
物事の本質を捉えることを意識して深い思考をする、なぜどうしてという問いを常に持つ。
「こういうものだから」で思考停止しない習慣を身につけることが大事。「転」は魂。
自分の意見を持たなければいくら小論文の練習をしても無駄である。
起承転結で書けるようになれば、小論文以外のブログのような文章にも応用・アレンジできる。
小論文スキルは生涯にわたり有用なスキルなのである。
そして、この本の舞台となった学校が、男尊女卑の風潮が色濃く残る地方であることは印象深い。
そもそも家庭内で女子の大学進学が想定されていないどころか早く働き手になれという価値観の世界から国公立大を目指そうというのは、50メートル走でスタート地点が他の人らより100メートルくらい後ろになっているようなものだ。
よほど気持ちを強く持ち思考を走らせなければ結果は出せない。
都市部の、理解ある家庭に生まれついた人々からは見えていない旧民法の世界観の中での、ある種の究極的なジェンダー教育の一つが小論文というのは非常に示唆に富んだ話なのである。